本州最北端の地へ ~1日目

岩手では冬の間はFZXで出かけられないので暇だなぁ、と思っていたが、車で出かけるのもいいかも、とふと思いついた。私にとって車とは女房を助手席に乗せるものと決まっているので、独りで車の旅をするという発想がなかった。
どうせ車で旅をするなら、FZXとは違う旅をと思ったが、友人のたかぴいさんが車中泊で方々へ出かけて楽しそうにしていたので、車中泊をしてみることにした。
最近は車中泊がテント代わりになっているようで、車中泊しやすいことが車のウリの一つになっている。
まあ、雨の日にテントを張った(あるいは畳んだ)ことのある人は、すぐ横になれる(すぐ出発できる)というのはどんなに楽なことか想像がつく。
でもテントを張るということは、焚火の火を見ながらボーッとしたり、チェアにくつろいでコーヒーを淹れたりと、シュラフに寝ること以外の楽しみもセットになっている。
なんだかんだと御託を並べながら、さて今の私の車で車中泊はできるのか?と考えてみた。たしかに、後席は倒してフラットにできるので、寝られないこともない。シュラフを広げてどうなのか、その他の荷物を置く場所はあるのか、と実際にやってみた。

完全なフラットではないが、寝てみると気にならない傾斜だ。私の使っているコールマンのマルチレイヤースリーピングバッグは2mX90㎝と大柄だが、広げられる。

プライバシー保護のため、窓につけるカーテンもアマゾンで購入した。

キャンプ道具は一通り持っているが、バイクと違って積載には余裕があるので、自宅で使っているカセットコンロを持っていくことにした。
本当は大晦日から元日にかけて行きたかったが、今年は土日となり、礼拝を休むことはしたくないので、2週目にした。行く先は、宗谷岬にしたかったが、往復のフェリー代を捻出できなかったので、下北半島の大間崎にした。
昨年、本州最西端と最東端ツーリングをしたので、残っている本州最北端に行こうと思ったのだ。しかし、この時期の下北半島は宗谷岬ほどではないとしても、かなりヤバいのではないかと想像できた。普通のキャンプ道具のほかに、スコップやスクレーパー、防霜スプレーなどの積雪対策が必要だ。それに防寒衣類も必須なので、だいぶ荷物が増えた。
いよいよ出発の朝、天気予報は「全国的に南からの暖気により、3月中旬から下旬の気温となるでしょう」ととんでもないことを告げていた。今は寒中であり、大寒も1月20日からである。1年でいちばん寒い時ではないのか?でも大雪の予報よりはありがたい。

三陸道に入ると、全く雪がなかった。フツーのドライブ気分で青森県に入った。大間崎までは約400㎞あるので、高速道でも5~6時間かかるがせっかくなので、八戸から下道に降りた。

ツーリングまっぷるを参考に、おもしろそうな場所を探す。まず立ち寄ったのは三沢市にある「ミス・ビードル号出発記念地」である。三沢市に入ると米軍機が頭上をビュンビュン飛び交い、見上げるとF18のような機体が轟音をあげている。沖縄が何かと話題になるが、三沢もリッパな基地の街であり、米空軍機が燃料タンクを投下したニュースを思い出した。


ここは1931年(昭和6年)に2人の青年が世界初の太平洋無着陸飛行に挑んで成功した記念の地らしい。リンドバーグの話は知っていたが、ミス・ビードル号は知らなかった。7847㎞を41時間で飛んだとのこと。ジェット気流を利用するため日本が出発地に選ばれたらしい。こういう偉業は、もっと日本国民が知っていてもよいと思うが、マスコミが取り上げないからかな。
展望台に上ると太平洋が一望できた。


三沢市を過ぎると六ヶ所村だ。ここは「むつ小川原石油備蓄基地」で有名だが、広い原野のような湿地が点在するところだった。見渡す限りの雪原に無数の風力発電機が立ち、稚内のオトンルイ風力発電所より圧巻である。



風力発電機といい、備蓄基地といい、あまりにスケールが大きすぎて写真では表しにくい。ナビの画面を見ると東西3㎞ぐらいにわたって石油タンクが並んでいるようだ。
道路に雪は全くないので、予定したよりずっと順調に進み、午後3時に「道の駅よこはま」に到着した。下北半島には道の駅は3つしかなく、うち「かわうち湖」は冬期間閉鎖で使えず、「わきのさわ」は開いてはいるが、「わきのさわ」から大間崎に行く道路が冬期間閉鎖なので、「よこはま」しか利用できない。

トイレと駐車場が利用できる道の駅は、車中泊にはちょうど良いので今日はここに泊まることにする。大船渡からここまで324㎞だった。


人気ナンバーワンというドーナツをおやつに買ったが、これが絶品のうまさだった。女房のお土産に買えばよかった。道の駅の横にはトイレと休憩所の建物が別にあり、駐車場もきれいに除雪されていた。


休憩所とトイレの中は暖房されており、WiFiも使えるという至れり尽くせりの設備である。ただしトイレは24時間使用可能だが、休憩所は9:00~16:00以外は施錠されている。

着いた時には車はなかったが、夕方になると大型トラックが3~4台集まってきた。乗用車はというと、私のほかに1台止まっているだけである。

横浜町は菜の花畑の絶景で知られているところだが、今は何もない。陸奥湾に沈む夕陽が美しいというので、海岸に行ってみた。

ちょうど日没の時刻だったので、素晴らしい日没が見られた。下北半島の方角を見ると恐山のような山塊も見えた。

近くにある福祉センターに「よこはま温泉」があると知り、汗を流しに行く。350円とは良心的だ。

スーパーに行くと、刺身を売っていたので夕食に買い、車の後部でお湯を沸かしてご飯を温め、インスタントの味噌汁を作る。カセットコンロの五徳は大きすぎてキャンプ用の鍋では不安定になるので、餅焼き網を買ってきて乗せた。


あとは寝るだけだが時計を見るとまだ19時だ。駐車場に来た大型トラックはエンジンをかけっぱなしである。ドアを開けているとガランガランというディーゼル音がうるさかったが、閉めるとそれほど気にならなかった。
推理小説を読もうとかばんを探すが忘れてきたようだ。仕方ない、シュラフに潜り込み、ラジオをつけると、時々聞いているオールナイトニッポンが聞こえてきた。車内の温度は7℃を示しているが、シュラフの中は暖かい。
夜中に何度かトイレで目を覚ました。外は寒かったがトイレの中は暖かかった。ヘッドライトや車のキーなど、なくすと大変なものは暗闇でもわかるよう、S字フックにかけておいた。着の身着のままシュラフに潜り込んだが、暑くて途中でズボンは脱いだ。このシュラフは快適温度がー5℃とあるが、下着で寝た時の温度だろうか。

翌朝は6時に目を覚ましたが、まだ暗いのでラジオを聞いて過ごす。「おはようございます。朝の民謡の時間です。」と流れてきたのには青森放送らしいと思った。車内の温度は1.8℃で、外気温は0.5℃だった。
この時期に最低気温がプラスなんて、大船渡でもありえない温度だ。天気は快晴だったので、放射冷却で冷えると思ったのに、期待外れ(?)だった。窓についた水滴も凍っていない。

<続く>