いまさらの就活?大型2種に挑戦!~その2~

教習所では、最初の2日は1対1の授業だったが、3日目から私より遅く入校した人2~3人で学科を受けるようになった。
若いA君は、東京のバス会社の社員だが、大型路線バスに乗るため社命で来ているとのこと。学生のようなB君も東京だがフリーターで、資格を取れば就職に役立つと思い来ているとか。女性のCさんは40代だと思うが、長野県から来ており、パートでは収入が厳しいので、地域のコミュニティバスに乗るため大型を取りたいという。
3人とも普通免許しか持っておらず、大型は初めてだということで、技能でかなり苦戦していた。私は、S字やら縦列はトラックの要領で簡単だと思ったが、履修簿を見せてもらうと何回も再履修している。しかもCさんにいたっては、履修簿の見方もわからないようで、自分が不合格だったことも知らないでいた。
A君は、ハンドル操作がいまいちで、何となくハンドルを回しているらしい。「ここで3つ切って、ポール3本目が見えたら1つずつ戻すわけよ」と縦列のやり方を教えると、「何すか、その3つ切るというのは?」と尋ねられた。
「えっ?指導員がいくつ切ればいいか教えてくれるでしょ?」と聞くと、何となく聞いていたので、ハンドルを回す回数だとは思わなかったとのこと。「大型バスはいっぱい切ると3回切れるから、3つ切れと言われたら止まるまで回すわけよ。そして、教習が終わったら、それをテキストに書き込んで、イメージトレーニングしなくちゃ」と私は、老婆心から自分の持っているノウハウをすべて伝えてあげた。
4日目はシミュレーターの授業があった。大型バスのはないので、タクシーのシミュレーターだ。40インチくらいのモニターが3面あり、ギヤはATだがシートやペダルは乗用車と同じである。
私とB君に、指導員が「今日はこれで行ってみるか」とプログラムを選択すると、画面に街並みが現れた。「どっちからやる?」と聞かれると、B君が「私から」と手を挙げた。プレステほどではないが、結構なめらかな画面表示だ。
40km/hで走行していると、後ろの乗客は「もっと急いでください」とせかしてくる。その気になって加速すると、横Gが表示されており、カーブで減点されていく。信号機も意地悪く黄色に変わったり、追い越そうとすると、前方から車が急に現れたりと、ヒヤヒヤの連続である。もうすぐさくら町というところで、前車が急停車し、追突してゲームオーバーとなった。
2回目にやった私は、B君の時に出てきたイベントを覚えていたので、ああ、この辺で子どもが飛び出すなとか、あの信号は通過できないな、と先が読めるので、数々の難関をクリアし、最後の急停車にも追突せず、無事にさくら町にゴールインした。
最近の教習生は、こんな精密なシミュレーターで練習しているんだ、と感心した。これなら、仮免許で路上に出る時も不安は少ないだろうと思った。
学科は、分厚いテキストを使い、要点を解説していくだけで、授業の半分はビデオ視聴だった。模擬テストのようなことはないので、テスト勉強は自分でやるしかない。
受付で問題集を購入すると、6回分入っていた。それで、毎日ホテルに帰ってから、その問題と格闘した。大型2種の学科の合格率は4割とネットに出ていたが、95問ある〇×問題で、90点以上が合格。しかも最後の5問は絵を見て3つの〇×問題に答え、3問中2問に正解しないと点数がもらえない。
その問題というのが曲者で、たとえば、「停留所で止まっている路線バスが発進の合図をしたときは、後方の車は一時停止しなければならない」というような、ビミョーな問題がほとんどだ。「う~ん、発進するんだから止まってあげるのが良識あるドライバーだろうな」と思い〇にすると、これが間違い。法令では「発進を妨げてはならない」とあるが、一時停止の義務はないのだ。で、×が正解。
1日1回分ずつやったが、5回やって、最高が87点。ダメだ、これでは受からない。自分が間違った問題を丸暗記して、6回目に挑んだらようやく90点取れた。
路上教習の方は、毎日違うコースを走るが、路線バスを想定してか、だんだん狭い道になっていく。しかも、路上駐車や工事中、児童の下校時刻と、だんだん条件も厳しくなっていく。
私が一番注意されたのは、路肩に停車している車のわきを通る時。必ず1mの間隔を取って通過しなければならないのだが、路肩の白線の外に駐車している車の場合は、ついこれは大丈夫か、と白線に沿って進むと、「ドアが開いたら衝突ですよ」と指導が入る。
対向車は「教習中」の標識で、たいてい余裕をもってすれ違うのだが、路線バスは教習車に特に優しく、後輩だと思うのか(いや、そうではなく、バスとバスのすれ違いは狭い道では困難だからだろうけど)、わざわざ止まって譲ってくれる。
それでも、交差点で、左折する際に停止線をはみ出して止まっている車がいると、オーバーハングのため曲がれない。大型バスを運転してみると、普段の自分の運転も思いやりのある運転になってくる。
でも、路上教習は楽しかった。50分間の教習だが、すいている時間には片道15km近くも遠出をする。村山市に自校はあるのだが、隣りの東根市やはるか天童市まで行くこともあった。
いよいよ最終日、卒業検定を前に最後の見極めがあった。ところが、私は楽しい路上教習を続けるうちに、すっかりコース走行のやり方を忘れてしまい、大ミスをやってしまった。
卒検では「鋭角」と「後方間隔」という、バックして50cm以内に停車させるのが必須で、縦列駐車か方向変換はその日によると言われ、見極めではそのすべてを復習した。何とか、鋭角は2回切返して通過できたが、後方間隔ではぶつけてしまい、縦列ではやり方をすっかり忘れてしまったのだ。
すっかり落ち込んだ私に、指導員は「何をそんなに緊張しているんですか、しっかり教習してきたことを思い出して落ち着いてやってくださいよ。あなたにとって免許取得は目標ではなく、夢の第1歩でしょう。自分の夢を実現させましょう」と励ましてくれた。
そうか、免許は目標ではなくスタートなんだ、と気を取り直し、この時の指導員の言葉は今でもありがたく思い出す。
いよいよ卒検の日。朝8時50分に集合して、別室で注意を聞き、課題と路上検定のコースを知らされた。B君と一緒の受検である。検定車に乗り、まずコース内を走行する。大型を取った時も検定は緊張でカチンカチンになったが、2種も同じである。B君と交互に運転して課題を行う。
後方間隔は2度やり直せるが、接触したら即終了である。1度目は70cmだった。2度目は緊張でクラッチを踏む足がワナワナ震えた。もう少しもう少しとバックしていき、アブナイ!と思ったところでやめた。結果は30cmだった。
縦列が課題だったが、ここで意外なことが起こった。検定員が「なんで、それだけしか切らないの?私ならもっと切るよ」とのたもうたのだ。「えっ?!それって教えてくれているの?」と驚きつつ、もう一つハンドルを切ると、すんなり納めることができた。
その他の課題でも、まるで教習しているかのように、「ほら、もうちょっと前に出して」とかダメ押しをされ、うまくこなすことができた。
路上に出ると、「はい、あの標識を停留所だと思って停車して」とか、その場で指示されることも多い。バスの場合には安全確認が大事で「左良し、右良し、後方良し」のほかに「車内良し」というのもやらなくてはならない。
これは、一時停止したあとや停留所から発車する時、車内の安全を確認するためだ。そして、左折する際には、「巻き込み良し」というのと、「横断歩道良し」というのがあり、私はこの横断歩道の確認を忘れてよく注意された。
バスの運転手は本当に大変だとつくづく思った。さすが、2種免許だけのことはある。B君は並木道で、左に寄りすぎ、枝に車体が当たってしまい、補助ブレーキを踏まれた。
何とか教習所に戻り、合格発表を待っている間、二人で「あんなに教えてくれたけど、減点されたのかな?」とか「補助ブレーキを踏まれたから、ダメかも」と弱気になった。
ところが、2人とも合格で、即卒業式となった。B君は喜ぶどころか、「こんなので合格しちゃってホントに就職できるかなぁ」と不安そうだった。私は、きっちり7日で卒業できるなんて、想像していなかったので、恐ろしい自校だなぁ、と思った。
この学校のモットーは「卒業保証」で、卒業できるまで指導しますというのだが、不合格者を出して人件費を掛けるより、合格させてしまえばイイ、ということか。
千葉に戻ると、次の日に免許センターに行き学科試験を受けた。大型2種の受験者は2人だったが、私はさいわい合格し、もう一人は不合格だった。合格率は4割と聞いていたが、確かに厳しいのだ。

思い立って1か月ほどの奮闘で大型2種を手に入れることができた。さあ、これから終活、ではなく就活に励まねば。
